M006 私が聞いた ばあさまの話

M006 Old Woman, As I’ve Heard Tell


私が聞いた ばあさまの話。
卵を売りに市場へ出かけた。
一日かけて行ったはいいが、
大通りで眠ってしまった。

スタウトなる行商人がやって来て、
彼女のペティコートを切り出した。
膝あたりまで切り取られ、
ばあさま寒さで震えだす。

目覚めて最初にばあさまは、

ブルブル震え、ガタガタ震え、
わけが分からず泣き出した。
「どうしたんだい、この震え。
こんな私は私じゃない・・」

「家の仔犬は分かるだろう。
わたしが私か、私じゃないのか」

「もしもわたしが私なら、
仔犬は尻尾を振るだろう。
もしもわたしが私でないなら、
仔犬はきっと吠えるだろう」

ばあさま夜道を歩いて行って、
我が家の犬に近づいた。

犬は鳴きだし、ばあさま泣き出す。
「なんてこったい! 情けなや。
やっぱりわたしは私じゃなかった!」


There was an old woman, as I've heard tell,
She went to market her eggs for to sell;

She went to market all on a market day,
And she fell asleep on the king's highway.

There came by a pedlar whose name was Stout,
He cut her petticoats all round about;

He cut her petticoats up to the knee,
Witch made the old woman to shiver and freeze.

When this little woman first did wake,
She began to shiver and she began to shake,
She began to wonder and she began to cry,
"Lauk a mercy on me, this is none of I !"

"But if it be I , as I do hope it be.
I've a little dog at home,
and he'll know me;

If it be I , he'll wag his little tail,
And if it be not I , he'll loudly bark and wail!"

Home went the little woman all in the dark,
Up got the little dog, and he began to bark;
He began to bark , so she began to cry,

"Lauk a mercy on me, this can't be I !"
the England of Nursery Rhymes LXXV

なかなかに長いライムです。
しかしながら、tell ―sell day ― highway Stout ―aboutと、韻を踏んでいくのは流石です。

ライム自体はナンセンスでもあり、哲学的でもありますね。
なぜ、スタウトはおばあさんのペティコートを切ったのでしょうか?
そもそも、スタウトって誰よ?

この後、おばあさんはどうなってしまったのか?
マザーグースは一切答えてくれません。

ところで、自分は本当に自分なのか、それとも他の誰かがなのか?
そんな疑問を子供の頃に持った人は多いはず。
(今なら中二病と思われるかもしれないけれど)

これは昔からの様で、シェイクスピアにも同じようなセリフがあるそうです。

ただ、「私は私か、そうではないのか」を犬に決めさせる。
しかも、結果「私は私でなかった」と結論付ける。これこそがマザーグースですよね。

 


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