6. マザーグースの特徴
このように、マザーグースはいろいろな要素を含んでおり、一言で片づけるのが難しい。
じゃから、吾輩も最初に「マザーグースとはマザーグースの事である」と言うほかなかったのじゃ。
ただ、その中でもいくつか共通した特徴というものがある。
まずは、市井の者たちや、当時の市民たちに直接結びついていたという事じゃ。
マザーグースを知ると、その当時の風俗や習慣、考えや事件などが想像できる。
また、語り継がれる教えや言い伝えなどもわかってくるぞ。
それと、マザーグースは、決して「いい子ちゃん」では無いという事じゃ。
後日語るが、日本で初めて本格的なマザーグース集を発表した北原白秋は、マザーグースの事をこう説明しておる。
「不思議で美しくて、をかしくて、馬鹿々々しくて、面白くて、なさけなくて、怒りたくて、笑いたくて、歌ひたくなる」
実に特徴をよく捉えておる。
そして、さらに加えるならば、「皮肉屋で、屁理屈が多く、不気味」じゃろう。
マザーグースには残酷な描写や、グロテスクな表現。そして意味ありげな言い回しや明からな嫌味、差別的表現も少なくない。
中には、本の出版に際し少々おとなしめの表現に変更した歌もあるという。
グリム童話が本来はぐっと、不気味な内容であったことを考えると、当時の人の考えは今よりも少々ダークだったのかも知れない。
あるいは人間の奥深くに、そういった要素があるからこそ、時を超え、世代を超え、年齢も国境も越えて人たちを魅了し続けるのかもしれん。
いずれにせよ、英米人の心に根付くもの。その一つであることに間違いはない。